2018年02月03日

ひっかかり過ぎる

中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html
 この本に、カラヴァッジオが、20世紀まで、あまり評価されず、1951年のミラノのカラバッジョ展でブレイクして、再評価されたような記述があります。
  どうも、これの種本は、
   ジョナサン・ハー 著  , 田中 靖 訳 、消えたカラヴァッジョ 2007/12/12  岩波書店
         https://www.iwanami.co.jp/book/b264570.html
という、小説ではないか?と「消えたカラヴァッジョ」を読みはじめて思いました。
  そういう記述が冒頭近くにありますのでね。

  この小説、さらっと読めるという評判ですが、どうもおかしなところが多く、その都度、ひっかかってしまうので意外に読みにくい感じがします。ダヴィンチ・コードほどのトンデモじゃないんですが、ひっかかるたびに反感をもつので通読できるかどうか怪しく思ってます。
   アイルランド国立美術館に対する偏見に満ちた描写もどうかと思います。 また、修復作業について、そうとうおかしな記述があるようにみえます。キャンバスの裏打ちは、蜜蝋とダマール樹脂でやるんじゃなかったかな?糊なんか使うの?と思ったら、色々流儀があるようです。イタリア式とかドイツ式とか。。それに裏打ちのときは薄い紙を表面に貼るでしょう、、机に直に絵画の面をのせるなんてありえないよね。当方は、東洋画や拓本の裏打ちや修理はやったことがあるので少しはわかりますが、かなりひどい記述ですね。

  なんか、業界で聞いた、真偽不明の噂話やジョークを知ったかぶりにきかされているような感じがして、かなり不快です。読者を無知だと決めつけて、業界用語を使っておまえらは知らないだろう、と得意がっているような感じがします。
    例えば、冒頭にでてくる サー・デニスは、Sir John Denis Mahon, CH, CBE, FBA (8 November 1910 ? 24 April 2011)でしょう。注釈か後書きにでも入れればいいのに、初め、雑誌アポロの編集者・学者として活躍したDenis Suttonかと思いましたが、カラヴァッジョの本を読んだら、こっちの人でした。


posted by 山科玲児 at 10:51| Comment(2) | 2018年日記
この記事へのコメント
実際イタリアではカラヴァッジョは「ロベルト・ロンギが再発見した」、というのが通説で、ロンギが亡くなった現在も、ロンギに直接指導されたロンギ派の学者が未だにイタリアのカラヴァッジョ界では幅を利かせているので(本に名前の有ったミナ・グレゴーリを筆頭に)、何もかもロンギありきです。
イタリアびいきの私ですが、この本を読むとアメリカ人特有なのか、イタリア人やイギリス人がいかに優れていて…という悪意(?)が伝わってきます。完全にフィクションとして読ませてもらいました。
Posted by fontana at 2018年02月03日 11:24
>fontana 様

コメントありがとうございました。

 まあ、ロンギがカラヴァッジョを1.5〜2流画家から大画家へ押し上げたのは確かですから、当たらずといえども遠からず、そう厳しく議論するようなことではない、とは感じております。

 著者はアイルランドにはいかないで書いたようで、関係者にはかなり嫌われているようです。 Mahonの発音もマーン(ラテン系だとHが抜けるのでしょう)。スコットランドのビール館Biel Houseもチェックしてないんでしょうね。なかなか良いネタだと思うのですけど。

 なんとなく、米国人のスノビズムが感じられてあまり親しめる本ではありませんでした。

Posted by 山科玲児 at 2018年02月03日 13:42
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