に、3月13日〜4月8日まで公開される
国宝 「智永 真草千字文」について、あまり知られていない資料を提供しましょう。
国宝 「智永 真草千字文」について、あまり知られていない資料を提供しましょう。
雑誌「墨」で小さく紹介し、ネットでも1997年にも、紹介したんですが、かなり粗雑な画像だったので、また提示する意味はあるでしょう。この国宝 「智永 真草千字文」、もと正倉院にあったものだという推測もなされていますが、明治時代には京都の谷鐵臣の所蔵でした。谷の跋がついていましたが今は谷跋は行方不明のようです。
行方不明の跋文の珍しい焼き付け写真が手元にありますので、紹介します。焼き付けがセピア色になってしまっています。紫色の部分は変色のようです。現物が行方不明である以上、こういうものでも価値はあるでしょう。もともと「智永 真草千字文」、全部の焼き付け写真セット册だったようなんですが、かなり落丁した册を偶然古書展で入手したら、これが末尾についてました。
原文の草書を読むと次の通りです。
右楷草二千字紙用向麻墨光如/漆初有異僧伝之云昔時空海入/唐所獲与諸□観賞或以為永師真蹟/或以為虞[衣者]臨模余即宝秘之不/斉文皇禊帖也/ 甲申之夏/太湖翁識
/は改行箇所
拙訳> 右の楷書草書の二千字は、黄麻紙を用い、墨色は漆のようである。もともっていた僧侶の言い伝えでは、空海が唐でえたものだそうだ。いろいろな人が観賞して言うことには、「智永の真跡だ」「虞世南かちょ遂良の模写だ」。私がこの墨跡を宝としていることは、唐の太宗皇帝が蘭亭序を宝としたことと同じではないだろうか? 明治17年夏太湖翁識
>epokheさん
コメントありがとうございました。
>「唐所獲焉諸多観賞」とは読めないでしょうか。
たしかに「焉」のほうが良いようです。読み下さない、「置き字」としての「焉」の使用だと解釈できます。
「多」の方は、草体としてはおかしいので、同意しかねます。一応、関中本千字文や字典類とも見比べましたが、やはり違います。あるいは谷氏自身の書き間違いかもしれません。
>「諸多」を『漢語大詞典』では、「許多;好些個。」と説明しています。
明治初期の漢文ですから、白話文は使わないでしょう。日本式漢文だろうと思います。
実は、この釈文は、焼き付け写真に付属していた、日本で活動していた書画家らしい丁羅福の1967年ごろの釈文書き込みをもとにしています。