2018年02月05日

国宝 「智永 真草千字文」谷跋

真草千字文 谷鐵臣 跋.JPG


太宰府の九州国立博物館:特別展『王羲之と日本の書』
http://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s50.html
に、3月13日〜4月8日まで公開される
国宝 「智永 真草千字文」について、あまり知られていない資料を提供しましょう。
雑誌「墨」で小さく紹介し、ネットでも1997年にも、紹介したんですが、かなり粗雑な画像だったので、また提示する意味はあるでしょう。この国宝 「智永 真草千字文」、もと正倉院にあったものだという推測もなされていますが、明治時代には京都の谷鐵臣の所蔵でした。谷の跋がついていましたが今は谷跋は行方不明のようです。

   行方不明の跋文の珍しい焼き付け写真が手元にありますので、紹介します。焼き付けがセピア色になってしまっています。紫色の部分は変色のようです。現物が行方不明である以上、こういうものでも価値はあるでしょう。もともと「智永 真草千字文」、全部の焼き付け写真セット册だったようなんですが、かなり落丁した册を偶然古書展で入手したら、これが末尾についてました。

原文の草書を読むと次の通りです。
右楷草二千字紙用向麻墨光如/漆初有異僧伝之云昔時空海入/唐所獲与諸□観賞或以為永師真蹟/或以為虞[衣者]臨模余即宝秘之不/斉文皇禊帖也/   甲申之夏/太湖翁識
/は改行箇所
拙訳> 右の楷書草書の二千字は、黄麻紙を用い、墨色は漆のようである。もともっていた僧侶の言い伝えでは、空海が唐でえたものだそうだ。いろいろな人が観賞して言うことには、「智永の真跡だ」「虞世南かちょ遂良の模写だ」。私がこの墨跡を宝としていることは、唐の太宗皇帝が蘭亭序を宝としたことと同じではないだろうか? 明治17年夏太湖翁識
posted by 山科玲児 at 07:25| Comment(4) | 2018年日記
この記事へのコメント
はじめてコメントします。以前ネットオークションでお世話になった者です。漢文に疎いのですが、解読を試みました。「唐所獲与諸□観賞」は「唐所獲焉諸多観賞」とは読めないでしょうか。「諸多」を『漢語大詞典』では、「許多;好些個。」と説明しています。読めない字があると気になってしまうものですからコメントしてみました。
Posted by epokhe at 2018年02月05日 23:11
これは「友」ではないでしょうか。
Posted by shorindo at 2018年02月06日 06:43


>epokheさん

コメントありがとうございました。

>「唐所獲焉諸多観賞」とは読めないでしょうか。
 たしかに「焉」のほうが良いようです。読み下さない、「置き字」としての「焉」の使用だと解釈できます。
  「多」の方は、草体としてはおかしいので、同意しかねます。一応、関中本千字文や字典類とも見比べましたが、やはり違います。あるいは谷氏自身の書き間違いかもしれません。

>「諸多」を『漢語大詞典』では、「許多;好些個。」と説明しています。
 明治初期の漢文ですから、白話文は使わないでしょう。日本式漢文だろうと思います。

  実は、この釈文は、焼き付け写真に付属していた、日本で活動していた書画家らしい丁羅福の1967年ごろの釈文書き込みをもとにしています。

Posted by 山科玲児 at 2018年02月06日 08:11
字典類まで調査して下さり恐縮です。「焉」は文脈からも字形からも、「与」よりふさわしい気がします。「多」は字体に無理がありますね。まあ何となく意味が分かるので穿鑿しないでおきます。どうもありがとうございました。
Posted by epokhe at 2018年02月06日 08:27
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