2018年02月20日

敦煌の黒い仏様

敦煌 壁画  北涼.jpg敦煌壁画模写


絵画の変色について書いた、15年以上前に書いた文章に多少手をいれて、再録する。
どうも、この黒くなった絵具は、鉛白や鉛丹なのではないか?と思っている。
鉛の硫化によって黒くなってしまうのだ。

イメージ左は5世紀ごろの絵画で隈取りや光背が皆黒くなってしまっている。
イメージ右は7−8世紀ごろの天人(模写の一部)でやはり肌が皆黒くなってしまっている。
オリジナルのイメージはかなり違うものだっただろう。
ネガポジ反転してみたら、少し復元できるかとやってみたがダメだった。
光背なんかが黒くなっているが、もとは輝かしい白やピンクだったのだろうから、そうとうイメージが違うはずである。


***
敦煌壁画でしばしば仏像の肌が黒くなっているが、これはおそらく本来の色ではありません。後世の壁画でおおいかくされたところを剥した部分では、たいていピンクか赤っぽい肌色です。これは、絵の具の化学変化のせいのようです。。
この朱色の絵の具は特に変色しやすいらしく、しばしば褐色がかった黒になっています。特に5ー6世紀の壁画はほとんどそうなっています。7世紀ごろの壁画では変色していないものもあり、部分的に変色しているもの、全部黒褐色になっているもの、さまざまです。だから、できた当時の印象と現在うける印象は相当違うでしょう。以前は「インド人の黒い肌を寫したのか、さすがにシルクロードの壁画は違うなあ」と思っていたのですが、誤解だったようです。そうはいっても、変色するまえの色が何なのかは厳密にはわからないのだから、模写するさいにも復元的に模写することは容易ではありません。阿修羅や不動明王のようにもともと黒や青黒の肌色だったかもしれませんから、明白な場合はともかく、個々のケースでは軽率な判断はできないのです。現在の色を尊重する他はありません。まして復元修理など不可能です。このことは、あまり敦煌壁画紹介の解説文には書いてありません。なぜでしょうか??
この変色は1949年に焼けた法隆寺壁画の一部にもあって、黒ずんだ薬師如来の尊顔はそのせいだと思います。
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posted by 山科玲児 at 07:41| Comment(0) | 2018年日記
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