2018年04月13日

酒飯論絵巻

酒飯論.JPG

  最良本  または原本とされる絵巻が2004年7月に、文化庁に入ったときのお披露目展(東京国立博物館)で観た。五〇〇年ほど前、1510年ごろに狩野元信が制作と推定されている。 もちろん部分的にしか開かれなかったのだが、色の保存の良さ、厨房の風俗描写の貴重さなど、強い印象を受け、イメージのようにカメラで直接撮影した。

  この作品は16世紀1510年ごろの作品とされている。16世紀初めごろの料理の仕方の細部をかなり具体的にみることができる希有の資料である。実は料理書自体、一番古いのが17世紀前半の料理物語とされているので。それ以前の料理のさまをかいまみることができるのだから、得難い資料である。

 並木 誠士  日本絵画の転換点 酒飯論絵巻
     http://www.showado-kyoto.jp/book/b286162.html
  によると、この絵巻には模写本 が多いので、模写本の場合、細部が変形してしまって 料理資料としても間違うことがあるらしい。例えば、模写本で、箸を描き忘れた結果、手でやっているように見えるとか。。
  並木氏の本は、おもいいれがあるのはいいのだが、どうも美術史の事実関係として、おかしなところが多いように思う。
  例えば屏風のような画面  障屏のような世俗的室内絵画が平安時代にはなかったかのような記述があるが、そんなことはない。そういう絵はほとんどすべて消滅してしまい、火事や戦乱のときに持ち運んで待避しやすい絵巻物が残ったというだけである。また寺院のほうがより残りやすかったので仏教絵画のほうが残ったというだけだ。
  江戸以前の絵画を絵巻物の時代と風俗画の時代にわけるというのは、応仁の乱で、大型の絵画がほとんど焼失したという現実を反映しているだけだ。つまり残り方の問題であって、当時の人々がどういう絵画を制作し愛好したかということとはあまり関係がない。
  むしろ、宗教や教訓、物語を背景にした古い絵画と、そういうのがない風俗画がでてくる16世紀以降の絵画を分けるという視点のほうがよく、大きさや型式でわけるのは、不適当だろう。
  17世紀ごろには、
MOAの湯女図(重要文化財)
http://www.moaart.or.jp/?collections=065
なんてのもでてくる。これを購入するとき、世界救世教教祖岡田氏の古美術顧問の人は教祖に薦めるのに躊躇したそうだ。まあ主題が主題だからね。


posted by 山科玲児 at 06:02| Comment(0) | 2018年日記
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