が、チラシをみて一抹の不安を感じました。あまりに斉白石の典型的なスタイルの作品ばかりで、多様性や驚きがないように思えたからです。
斉白石(1864〜1957)には、在世時から代筆が多く、なかなか鑑識は難しいようです。たしか東京国立博物館に1973年に入った戸田直温氏寄贈の絵は、眼の前で描いてもらったというものだとおもいます。ひとつには、名声が上がったのは六十歳過ぎてからのようで、更に第二次大戦終結後は既に八十歳を超えていて、体力的にも大量の制作が困難であったことがあると思います。
斉白石の初期のものが無いようにみえるのも、残念なところです。超細密な肖像画 や 斉美人として有名だったらしい美人画、清末の伝統的山水画をよくしたらしい斉白石の姿が伺われる作品もほしかったように思いました。特に、イメージにあげた超細密肖像画(文勤公遺像 台北故宮)は、一般的な斉白石画のイメージの対極にあるように感じております。いうまでもなく今回の展覧会には出ておりません。 これは、肖像画像主の子孫が台北國立故宮博物院に寄贈したもので、確実性が高い作品です。斉白石48歳1910年の作。当時も既に簡明な逸格の俳画のような作品も制作していたようですが、このような技巧的な肖像画も制作しており、他の緻密な肖像画の例としては、遼寧省博物館にも2点あるようです。
また、1987年3月に池袋西武百貨店で開催された斉白石展では、初期の山水画四幅対が出ていて、興味深いものがありました。これは、まるで四王を倣った王学浩などを思わせる伝統的味わいの深いものでした。今回では借山図が比較的早期です。これは53図セットのはずでしたが、どういう展覧方法になるんですかね。
Ref..
・中村渓男, 戸田直温氏寄贈の斉白石画について, MUSEUM173, 東京国立博物館, 1965, 8.
・劉芳如, 「畫文勤公」賞析一齊白石早期的人物畫風格,故宮文物月刊第十巻第十二期(通巻120)、 國立故宮博物院、台北、1993年3月
・中村渓男, 戸田直温氏寄贈の斉白石画について, MUSEUM173, 東京国立博物館, 1965, 8.
・劉芳如, 「畫文勤公」賞析一齊白石早期的人物畫風格,故宮文物月刊第十巻第十二期(通巻120)、 國立故宮博物院、台北、1993年3月
・西武美術館 倉吉博物館、斉白石展、1987