中国の墨の歴史について、昨日少し書いたので昔翻訳した文章を紹介したい。
唐墨は、藤原時代末期の夜鶴庭訓抄にも「唐墨が良い」と言われて以来ブランドを誇っていた。
イメージは東京国立博物館にある明末とされる呉申伯の大きな墨である(当方 撮影)。
清末以後カーボンブラックの乱用で劣化した。
その悲惨な事情は墨の大コレクター 葉恭綽(1881-1966)が書いた「墨談」
http://reijiyamashina.sakura.ne.jp/inkyee.htm
で明らかである。
葉恭綽がこれを書いたのは1950年代香港あたりではなかったかと思うが、その後、更に破滅的になったのが文化大革命時期である。文化大革命直後には、泥の塊のような、もはや墨といえないようなものを生産する惨状になった。
こういう事情からすると、丁度100年前、1918年生産の古墨でも、質が良くない物だらけということになってしまうのは無理はない。つまり、現在市場にある中国古墨はそうとう古いものでも粗悪品が多いのである。また、1990年代ごろには、実に巧妙な清朝古墨の贋作が多数日本で流通していた。とても手をだせない、と思ったものだ。
ただし、最近の新しい中国墨には、かなり良いものもあるようだ。