2019年08月20日

ファン マンデルの「北方画家列伝」注解

ファンマンデル.JPG



 23日に返却するので、ファンマンデルの本を大車輪で読んでいるのだが、
 どうもイライラ感というか違和感を禁じえない。

 というのも、従来もってきたネーデルランド絵画史の枠組み 鳥瞰図と、ファンマンデルが提示するものがかなり違うからだ。当方が従来もってきた15ー16世紀フランドルオランダ絵画に関する概念は,基本的にはMax J.フリートレンダーによるものである。フリートレンダーの「ファンアイクからブリューゲルまで」という名著によって地図をつくられ評価を学んだものであるといって、そう間違いない。この概念図をフリートレンダーはさらに先輩から学んだのかもしれないが、日本の多くの学者もだいたい似たようなものではなかろうか?
 ファン・マンデル本はフリートレンダーのモデルとはかなり違っている。

 ファン・マンデルの本は16世紀ロマニスト画家列伝と解釈すれば、そうおかしくはない。
 もちろん、ファン・アイク、ロヒール、メムリンクなどについて記述がないわけではないし、現在ではファンマンデルしか書いていない貴重な記述も多い。ハーレムに長くすんだせいか、ハーレムの画家らしい、アウワーテル、ヘルトートヘン・トート・シント・ヤンスの記述は詳しく、ひょっとしたらこのファン・マンデルの記述が2人の画家に関する信頼すべき唯一の記述かもしれないと思うくらいだ。

しかしながら、いわゆる「初期ネーデルランド絵画」にはかなり冷たい。フレマールの画家、ロヒール、ペトルス・クリストス、ディエルク・ブーツ、ヒューホー・ファン・デア・グース、 メムリンク、イッセンブラント、ヘラルト・ダヴィッドなどの記述が非常に薄いまたはないも同然である。これは、スキラ社 の Flemish Painting 第1巻が彼らで2/3が占められていることと著しい対照をなす。
  一方、ファンマンデルが称揚する画家はファンアイクは別として、ルカス・ファン・ライデン、スコーレル、デューラー、ヘームスケルク、スプランゲル、ホルティウスというラインである。
 16世紀の画家でも、スペインへ出稼ぎにいって「初期ネーデルランド絵画」の大作をスペインで制作したジュアン・フランダース(フランドル人のジョン)なんかはでてこない。

 つまり現在、私がもっている15、16世紀フランドル・ネーデルラント絵画史の概念とどうもうまくあわないのだ。
  一方、ヴァザーリの画家・彫刻家・建築家列伝 第2版(1568 )は、現在のイタリア・ルネサンス絵画史の概念とだいたい一致する。

  ただ、現在の15、16世紀フランドル・ネーデルラント絵画史の概念が、絶対に堅固なものかというと、当然、みなおしの余地は多いにあるだろうから、このズレが将来の研究を刺激する源泉になるかもしれない。

REF カーレル・ファン・マンデル、「北方画家列伝」注解,中央公論美術出版  2014
REF. Flemish Painting: The Century of Van Eyck  by Albert Skira (editor), Jacques Lassaigne 
Published 1957 by Albert Skira Lassaige
posted by 山科玲児 at 21:11| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: