2019年10月17日

「イタリア料理」や「日本料理」は存在するのか

美食の文化史.jpg



美食の文化史(ref1)は、仏蘭西中心でフランス中華思想を感じるとはいえ、面白い本だ。

220Pに示唆的な文章がある。
>民族料理というのは存在しない。あるのは順応性豊かな国際料理と地方料理だけである。ガストロノミーの単位は地方であって国家ではない。

似たような意見を有名なシェフであったレイモン・オリヴェも書いていたようだ(ref2)。

  スパゲッティについて、
>イタリア全土に普及したのが1960年代だ。
という説を読んだ。だからといってスパゲッティがイタリア料理ではないのだろうか?そりゃ、全イタリアが同じということはないだろう。アルプス地域もあるしね。パスタは南イタリア中心だからあたりまえのことである。パンも多いし、ロンバルディアではリゾットも多い。「イタリア料理」という概念自体が便宜的なもので、美食の文化史の著者が主張するようにナポリ料理とかトスカナ料理とかいうような細かいカテゴリーにするほうが良いのかもしれない。

 1960年代、九州長崎では蕎麦屋がほとんどなかった。一軒あったがうどん類似のものだった(蕎麦屋さんごめんなさい)。となると、ざる蕎麦かけ蕎麦は、日本料理ではないのだろうか? 「日本料理」というのも便宜的概念だろう。

  ロシア料理のボルシチは、もともとウクライナ料理である。もともと「シチー」という広い意味でのロシアスープ・煮込みがあって、その一つであった。しかし、ボルシチがロシア料理でないとはいえないだろう。むしろ「ロシア料理」概念そのものが便宜的なものなんだろう。

  美食の文化史の著者がいうように、国家や民族に料理を結びつけるのは安易だが、無理があるのかもしれない。


REF1, ジャン=フランソワ=ルヴェル、美食の文化史、筑摩書房、1989 
REF2.  レイモン=オリヴェ フランス食卓史、人文書院、1980
posted by 山科玲児 at 06:44| Comment(0) | 日記
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