2020年05月10日

松本文三郎旧蔵・龍門二十品拓本

compare始平公.jpg

京都)龍門二十品の拓本見つかる 国内最古級、京大で見つかる 
波多野陽(2017年11月14日)
https://www.asahi.com/articles/ASKC23F4JKC2PLZB007.html

書家垂涎の古拓発見―松本文三郎旧蔵・龍門二十品拓本―
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/documents/171102_2/01.pdf

旧聞に属するが、学芸部はわりと良い朝日新聞が二年半ほど前にとりあげた話題で、中国書道史・拓本にも関係したことなので、とりあげてみることにした。

でも、この見出しは、京大のプレス・リリースを含めてかなり煽りがきつい、フェイクニュースに近いものである。朝日新聞学芸部はわりと信用してたので、かなり残念。。まあ拓本のエキスパートなんてろくにいないから、しょうがないだろう。

「最古」っていうのは、どうも京大人文研にあるものの中で最古という意味で、「日本国内最古」という意味ではなかったのに、プレスで、むやみに誇張したもののようである。

なぜなら、幸い、限定出版した本をPDFで公開しているから、拓本の写真をみることができるからである。
松本文三郎旧蔵・龍門二十品拓本 PDF
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/230133/1/ryumon20pin.pdf

全部、チェックしたわけではない。まず、当方が好きな、陽文という珍しい石刻の始平公造像記については、国内最古とは到底いえないだろう。また、かなり粗拓である(イメージ  左 松本本、右 別本 で比較)。清原實門氏が関与されていた谷川雅夫氏編輯の金石書学(ref1)という雑誌に古い拓本が影印されていて、これは日本に当時あったもののようである。
  二十品のうちで一番古い、この本でも最初に収録されている牛ケツ造像記拓本は確かに古いもので、台東区書道博物館所蔵本より古いかもしれない。楊大眼造像記は、道光以後の拓本であるが、どうもこの造像記の古い拓本は墨が重く線がはっきりしないものが多い。どうも道光ごろに洗いをやって文字をはっきりさせたらしい形跡がある。この拓本はそれほど古くはないが明快な感じを与える優れたものだと思う。

REF1. 金石書学、第2号、2000年8月1日、藝文書院、京都

posted by 山科玲児 at 09:39| Comment(0) | 日記
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