2021年04月14日

よみがえる正倉院宝物 - 再現模造にみる天平の技

九州  正倉院  模造  ss.jpg寺崎廣業  千紫万紅 廣業画鑑.jpg




九州国立博物館 | 特別展:「よみがえる正倉院宝物 - 再現模造にみる天平の技 - 」
https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s60.html


正倉院宝物 再現模造展を4月20日から開催する。
模造品というと、なんか軽くみるような感じもある。ひどい場合は、偽物贋物視する人だっている。しかし、正倉院宝物に限っては、いろいろな面があって、十分鑑賞に耐えるものが多い。なかにはちょっとどうかと思うものもないではないのだが、当方が観たものの半分ぐらいは、なかなかのものだった。御影の白鶴美術館の回廊のガラス棚に、さらっと正倉院御物模写の机などがおいてあったのは未だに覚えている。

いろいろな面、複雑な事情というのは、次のようなことである。

まず、現在、正倉院に保管されている本物のほうも、実は相当修理が入っていて、明治の部分が少なくないという問題がある。その件については
木内半古翁の
正倉院御物修繕の話、木内半古
http://reijiyamashina.sakura.ne.jp/kiuchi.htm

とすると、秋の正倉院展で観る宝物も、オリジナルな部分はあるのにせよ、模造品の部分もあるわけである。

 その2、
 実は、正倉院宝物のなかには、みるも無残に壊れ、部品もなくなり、残片となってしまっているものもある。修復不可能である。これに新材を補って完成形(想像の)にすると完全な捏造になってしまうし、もともとの天平?の古材も痛めてしまうだろう。
この展示ででている
模造 螺鈿槽箜篌の原本、がまさにそれで正倉院展でみたときは朽ちた材木のようにしかみえなかった。箜篌の原型は寺崎廣業が絵に描いている(上イメージ)ようなものである。
寺崎廣業「千紫万紅」|秋田市立千秋美術館 収蔵品データベース
https://www.city.akita.akita.jp/city/ed/ss/senshu-art/collection/search/detail/1696/1

イメージは、広業画鑒; 著者: 寺崎広業 ;  画報社: 大正6;から採った。これは著作権消滅している。

こういうものについては、やはり復元模造が必要だろう。正倉院展でも、模造が横においてあった。これは明治28年9月に完成した復元品である(REF)



 その3、これらは、明治以降の日本の巧匠たちの技術の成果でもある。つまり明治時代以降の工芸美術という側面があるのである。これについては、下記の本が詳しい。

正倉院の匠たち、草思社、1983年

  特に織物なんかは、小さな断片しかないものでも、反物として再現することができる。痛みやすい織物の場合は、このようにした再現品こそ、奈良時代の現実を反映している場合が多いと感じている。そして、こういう織物は現実に多数生産され、ハンドバッグやテーブルセンター、帯、表装用布など多くの人々を楽しませ喜ばせているわけである。龍村織物などが有名だ。
  また、こういう直接なものでなくても、間接的に工芸技術の進歩に寄与している。

 明治政府が、正倉院宝物を殖産興業のために活用したい、という意図で公開したりしたのだが、こういう点では実を結んでいるといえる。

ref   続正倉院史論、寧楽15、昭和7年11月

posted by 山科玲児 at 08:05| Comment(0) | 日記
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