司馬江漢「東海道五十三次」の真実
が去年の10月に刊行されていたようだ。
これは、『広重「東海道五十三次」の秘密』(祥伝社)という本が昔、出版されており、新書にもなっていたものの再刊または増補版であろう。司馬江漢の「東海道五十三次」肉筆画冊というものがあり、それを広重がマネして描いたという筋書きである。
どうもおかしいな、と思って、著者の對中 如雲(1943-?)のことを調べてみたら、なんとあのトンデモ本「幻の至宝柴窯発見 なぜ、伝説の陶磁器が日本にあったのか」
の著者だった。
氏が館長やった美術館博物館は、今はあとかたもなく消滅し、顧問やっていた
札幌マイセン美術館も経営母体とともに倒産閉館した
このような信用ならない人物の本はどうかと思う。
広重は現代画家じゃないんだから、「絵手本がなければ描けない」「絵手本が到着したので制作します」ような時代の画家なんだから、模倣模写は普通だっただろう。
だが、広重が模倣をしたかしないかということと、この、原本とされる司馬江漢の画冊とは関係がない別問題である。なぜなら、この画冊は贋作だそうだからだ。なぜ贋作とされるかというと、司馬江漢のサインの書体が違うだけでなく、描いてある熱田神宮の屋根が明治以降の形なんだそうだ(偽物を苦心して閲覧する気もないので未確認だが)。
広重の東海道五十三次は、読売新聞の額絵シリーズ(イメージ)で楽しむのが一番良いと思う。