佐藤 直樹, 東京藝大で教わる西洋美術の見かた (基礎から身につく「大人の教養」) 2021/1/27
https://honto.jp/netstore/pd-book_30701946.html
は、
2021年04月23日 ファンシー・ピクチャーズ
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/188604882.html
で紹介したように優れた見解が、多数述べられていて、推薦できる本だが、奇妙なことに、色々な間違いや、あれっと思うところもある。
まず、第一回 古典古代と中世の西洋美術
の冒頭近くで、
>古代を何度も復活させるのは、ヨーロッパ人の古代への強い憧れにほかなりません。これは一種のナルシシズムだとも言えるでしょう。ルネサンスは、東洋には見られない西洋独自の最大の特徴なのです。
ちょっと、東洋美術史における、とくに極東の尚古性、復古主義・古代尊崇を少しでも知っていたら、こんな言葉はでないだろうなあ。そりゃ東洋の美術制作者がギリシャ・ローマ時代の古代美術を「古代」「クラシック」として憧れるということはなく、別の「クラシック」を持っているだけなんだが、、藝大の大先輩:正木直彦校長や、矢代幸雄が嘆きそうですねえ。。
むしろ西洋の特色は、反古代ギリシャ・ローマに走りがちな、もともとケルトやゴート、ゲルマンの野蛮人だった本性と「古代への憧れ」が衝突するというコンプレックスに満ちた内部運動にあるんじゃないかなあ、と思っている。
どうも、白熱講義の講義録で突っ走り過ぎたところがあるのか、コロナのせいで編集者との打ち合わせができず、校正の問題があったのか、いろいろな問題があることを念頭において読む本です。ただ、面白いのは確かなので推薦はしたい。
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