マイケル・コウ先生のマヤ文字解読辞典(REf) を読んでいたら、
今のグアテマラ東部にすんでいる人々が使っているマヤ語の一種チョルティ語の古い形が、マヤ文明最盛期の文章語、文語、格式高い言葉で、メソポタミアのシュメール語、西洋中世のラテン語のようなものだと解明されたと書いてあった。
ここで、面白いのは、1950年、古代マヤの碑文の言語としてチョルティ語を推したのが、現在は色々と批判されて満身創痍になっているサー・エリック・トンプソン(サー・ジョン・エリック・シドニー・トンプソン) だということだ。ほかの学者はだいたいユカタン半島北部のマヤ語を推していたらしい。これはひょっとしたら、マヤ文字解読のキーになった「ランダのアルファベット」を残したディエゴ・デ・ランダがユカタン半島北部メリダにいたことと関係があるかもしれない。
サー・エリック・トンプソンは、マヤ文字解読という点ではむしろ頑迷な妨害勢力だったので、解読の歴史では、さんざんに書かれている人である。
ある意味で死後に名誉回復したようなものである。
トンプソンのもうひとつの不朽の業績にGMT(グッドマン・マルチネス・トンプソン)対照法がある。マヤの暦と西暦をどう対応させるかというやりかただ。
一時は劣勢で、別の計算法のモーレイ・スピンデン対照法が優勢だった。実際1967年初版の石田英一郎「マヤ文明」では、GMTのほうが定説だが、スピンデンのほうが良いかもしれない、と書いてある。しかしながら、最近は微調整したGMT+3できまりという状態である。
これは、トンプソンの晩年にはすでに有利になっていたので死後の名誉ではない。
REF マイケル・D. コウ, マーク・ヴァン ストーン , マヤ文字解読辞典 2007/7/1, 創元社