2022年02月10日

20世紀のメムリンク



CODART に Till-Holger Borchert先生が
A fake Memling or a genuine Van der Veken?
https://www.codart.nl/our-events/codart-veertien/congress/codart-veertien-congress-market-ideas/fake-memling-genuine-van-der-veken/
という記事を書いていた。

アムステルダムのライクス美術館にある
Anna en Maria ca. 1470-1500
https://collectie.rijksmuseumtwenthe.nl/zoeken-in-de-collectie/detail/id/b15a1212-e9fb-5e64-9adc-6a8aa4bf194c
が20世紀のJoseph Van der Veken (1872-1964)の作品ではないか?という話である。

この絵のもとになったメムリンクのJan Crabbe三連祭壇画はバラバラになっていて、イタリア、ニューヨーク、ブリュージュに散在しているが2017年にニューヨーク モルガン図書館兼美術館で、一緒に展示する特別展が実施されている
http://arthistorynewsreport.blogspot.com/2016/09/hans-memlings-triptych-of-jan-crabbe.html

ライクス美術館の作品は、確かにコピーではなく、寄進者を聖母に入れ替えたもので、ライクスは16世紀のメムリンクの工房での派生的作品だと考えているようだ。Till-Holger Borchert先生が新たに20世紀のパスティッシュ説を出したわけである。

この議論に関連して、、
プラド美術館にJoseph Van der Veken (1872-1964)の作品があるのを最近知った。作品を探していたのではなく、修復や取引の記録がないかと思って検索していたら、いきなりでてきた。

聖母子と寄進者
https://www.museodelprado.es/coleccion/obra-de-arte/la-virgen-con-el-nio-y-un-donante/1693b13d-1222-4caa-9234-2f0a5337c93c


これを初見で20世紀の作品だと判断できるだろうか??
私には無理そうだ。メムリンク クラスの有名画家の作品ではないが、16世紀はじめにブリュッセルかブリュージュで活動していた多数の群小画家の一人の作品だと思うだろう。

ただ、図像的には少しおかしいところはある。寄進者が聖母より高い位置にあり上から目線であることだ。これはちょっとありえない。幼児キリストの手の動きもあまり祝福にみえないが、これはまあ結構ヴァリアントがあるから決めてにはならない。

1916年にPablo Bosch y Barrauがプラドに遺贈したものだから、Venkenの若いころ40歳前後の作品だろう。

今回、リンクだけで画像出さなかったのはJoseph Van der Veken (1872-1964)の著作権がまだ切れていないので、よけいなトラブルを避けるためである。

posted by 山科玲児 at 07:40| Comment(0) | 日記
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