2022年04月12日

卵殻磁器と古月軒

三河内 enamel (1).jpg三河内 enamel (2).JPG


卵殻磁器egg shell porcelainという陶磁器やきものがある。中国では「脱胎粉彩」とか「脱胎磁器」「薄胎磁器」とかいうようだ。とにかく薄くて、裏から表面の模様がみえるくらい、半透明なので、ランプの覆いになっているものもある。
イメージは、そこまで薄くはないのでeggshellとはいえないが、光は通すタイプ、長崎の三川内窯。。

  はるか昔、これと古月軒を頭の中で混同していたことがある。実際は全く違う。古月軒は裏がみえるということはない。おそらく、清末から現代までの「脱胎粉彩」の絵柄が、古月軒風なものが多かったから頭の中で混同したのだろう。

この卵殻磁器は、明時代からあるようだ。古代では新石器時代末期の黒陶にもそういう極薄のものがある。壊れやすいので、あまり残っていないようだ。台北 國立故宮博物院で、成化や萬暦のそれらしい小盃を観た。
これと全く反対の無闇に厚い鉢を明時代の宮廷陶磁器にみたことがあるので、中国では薄い陶磁器ばかり尊重したわけではない。

現実には1920年代ぐらいからよく知られたということなので、実物として多く生産され、外国にも実物が渡ったのは、わりと新しい話かもしれない。1951年のJenys later Chinese porcelainにも一応、EGG SHELLとして紹介されてはいるが、。

 古月軒といわれるものの代表作は雍正帝時代のものがちゃんと残っていて、写真で紹介されている、一方「脱胎粉彩」の代表としてみるものにそういう古い傑作はなく、20世紀のものばかりをみる。どうも薄くする技法の誇示に力をとられて、芸術性が低いものが多いようにもおもわれる。そのため「おみやげ物」的あつかいになり、芸術品というランクに入るものが少ない。むしろ20世紀以降の芸術としての作品がありそうだ。

佐藤雅彦 氏の「中国やきもの案内」で景徳鎮での、この製造法の概略が書いてあった。原料も違うようでカオリンを多くするようだ。成形して器形を作って6〜7分の生乾きのときに鋸歯状の刃物で外側と内側から削り取って薄くするらしい。そして素焼きする。釉薬かける前に素焼きするのは日本では常識だが、中国では素焼きしないのが普通なのでこれは珍しい。
こういう方法で極薄のボディを作るものらしい。


一方、日本でもこの種の陶磁器は大正昭和初期に瀬戸で生産され海外輸出されたようだ。現在でも有田や三川内でとりくんでいる窯がある。
三川内
https://gokougama.net/technique/eggshell
有田
https://yamaheigama.co.jp/egg-shell


posted by 山科玲児 at 15:20| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]