
音楽史の本やCDジャケットに、ときにでてくるこの絵だが、3枚以上あるようだ。エルミタージュにあるの(イメージ)が有名である。
Hermitage
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Master_Of_Female_Half-Length_-_Concert_of_Women_-_WGA14386.jpg
Los Angels County Museum
https://collections.lacma.org/node/173789
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Master_of_the_Female_Half-Lengths_-_Three_Musicians_AC1992.152.142.jpg
Rohrau, Schloss, (オーストリア北東部) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rohrau,_Schloss,_Meister_der_weiblichen_Halbfiguren,_drei_musizierende_Damen.jpg
フリートレンダーが基準作にしたのは、このオーストリアのものらしい。
collection Graf Harrach'sche Familiensammlung, Vienna/Rohrau
これを描いた画家名はわかってない。同じ画家が描いたと推定されるかなりの数の絵が残っているのでそれをグループにして、「女性半身像の画家 The master of female half length 」と仮の名前をつけられている。
2021年07月02日 女性半身像画家の問題でも書きました。
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/188808162.html
M. Davies, National Gallery Catalogue, The Early Nederlandish School、3rd ed。1968
によると、
アントワープにあった工房でかなりの数の絵を残している、ということになっている。そしてあまり大きなサイズの作品はなく小型の作品ばかりだという。
この本で候補として、挙げられている画家名、は、Jean Clouet, Lucas de Heere, Hans Vereyckeである。この本が書かれた1968年から現在まで画家推定という点では、あまり進歩がないようです。
石川美子「青のパティニール 最初の風景画家」(みすず書房)(イメージ)
http://www.amazon.co.jp/dp/4622078449
ではパティニールの助手のカレル・アールツだったのではないか?という仮説を提起しています。もしそうなら、モデルの女性はパティニールの長女のブリジット、次女のアンナかもしれませんね。確かに背景のある作品ではパティニールに似たの風景画があることが多い。
出来不出来もあるが、ミラノのアンブロジアーナにある作品は特に美しい。下イメージ。
Daviesが館長やってた、ロンドン・ナショナルギャラリーにあるものは、人物というより風景中心のものが3点、女性頭部断片が1点である。ちょっと面白いのがヴィクトリア女王からもらった「聖クリストフォルス」がたいしたことないことでしょうか。他の3点はどうも一人の同じ収集家MindelheimのJoseph von Recheberg伯爵からでていることです。「エジプトへの逃避」は特にパティニール風ですね。パトモス島の聖ヨハネは海の部分の状態が悪すぎですが、左上の風景部はまあまあ。女性頭部は小断片ですが、けっこう良い作品にみえます。
https://www.nationalgallery.org.uk/artists/master-of-the-female-half-lengths
現存数が多いと書きましたが、実際、近年オークションにでているものですら、100点以上ある。勿論、後世のコピーや断片、強引に画家名をつけたもの、別人の模倣作なども多いのだろうが、他の画家と比べてもかなり多いようです。当時から歓迎された画風だったのでしょう。それでも多すぎるので、よくわからない16世紀前半の画家の作品を恣意的にこの画家の作品にしたものも多いと推測しています。
http://www.artnet.de/k%C3%BCnstler/master-of-the-female-half-lengths/
Sotherby's ニューヨークの2010年1月28日のオークションで、出たものはまあ良いほうにみえますね。
これ↓ は、ミラノのアンブロジアーナのもの