ルイ・ベルトランの散文詩集「夜のガスパール」を詩人逝去後1842年に出版に尽力した友人で彫刻家 ダヴィッド・ダンジェ Pierre-Jean David d'Angers(1788-1856)
https://en.wikipedia.org/wiki/David_d%27Angers
が、カスパール・ダヴィッド・フリードリッヒの関係者としてでてくる。この人David d'Angersと略称されるのでDavidが名前かと勘違いしがちだが、David d'Angersが姓というか渾名でPierre-Jean が名前である。師匠のダヴィッドと混同されるのを防ぐために「アンジェのダヴィッド」という渾名を使ったらしい。
1836年 彼は、フリードリッヒのアトリエをドレスデンに訪ねている。そして、フリードリッヒの横顔のメダルを鋳造している。
彼の訪問記の文章がフリードリッヒ概論(ref1)に長々と引用されているのには、驚いた。
夜のガスパールの詩を好んだ人は、カスパール・ダヴィッド・フリードリッヒの絵をも好んでいたのである。ある意味当方にとって「見ぬ世の友」という感じがする。
イメージは、David d'Angersによる死の床のベルトランの肖像:1920年刊行のGaspard de la Nuit,Angers(ref2)に掲載。この本に収録されているベルトラン自筆挿絵は1920年のこの時点ではアンジェ図書館収蔵なので、これはダヴィッドがもっていたのだろう。
そういう意味で、このフランス革命の画家・ナポレオンの画家ルイ・ダヴィッドの弟子である David d'Angers の人物に少し興味がわいてきた。ただ、David d'Angers の作品自体は古典主義的な彫刻で、さほど個性がある芸術家にはみえない。
ただ、平凡な肖像画ばかりが知られているルイ=レオポルド・ボワイー(1761 - 1845)にも、
トロンプルイユ テーブルトップ
https://www.photo.rmn.fr/archive/11-532347-2C6NU0OM5O6Z.html
という珍作奇作があるのだから、David d'Angersの作品も思わぬ一面をもっているかもしれない。
ref1 Tout l'oeuvre peint de Caspar David Friedrich、1976, flammarion, Paris のHenri Zetnerによる序説
ref2 Gaspard de la Nuit, CH. BOSSE Libraire, Paris 1920