今回の都美美術館のボストン美術館展
https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_boston.html
吉備大臣入唐絵巻が全部ひろげてあったのが、みどころかもしれない。
これの良さは12世紀当時の日本人の中国に対するみかたを知ることができる、ということである。 浜松中納言物語の挿絵を考えるときは、この絵巻を参考にするといいかもしれない。浜松中納言物語はまさに、京都の貴族の女性が唐を想像して書いたフィクションの物語なのだから。
もうひとつは、なんか眠っている人物がやたらに多いということである。
第3に、絵巻内にある屏風に描いてある絵はいわゆる月次絵で唐風ではないことである。
楼閣は、唐前期の李賢墓壁画を思わせるものがあり、馬の飾りにも唐三彩を連想させるものがあるから、なんらかの唐の粉本を参考にしてはいるんだろうけれど、ほとんどは関係ないようにみえる。
この絵巻は当初軽視されていて、流出してから初めて慌てて文化財保護の法律ができたといういわくつきのものである。
その原因は、今回末尾の鑑定文を読んでわかった。詞書きが「兼好法師の書」となっていたのだ。徒然草の兼好法師なら、鎌倉から南北朝の人である。その時代の絵巻なら多数残っているのだから、注目するに足りないと思われてもしょうがない。
文献や文字記録だけで判断した結果の失敗であろう。。