2023年01月06日

愛染明王像



愛染明王  細見.jpg

  実業家で古美術商でもあった細見古香庵は「欺し欺される話」を書いている。その中で平安仏画」で騙され、会社の一年分の利益を失ったという話を書いていた。ただ、その後昭和20年代に、思い直してまともな筋からであろうが、原三渓 旧蔵の愛染明王の仏画を購入することができている。それが、この昭和12年に旧国宝指定、現在重要文化財指定の愛染明王像である。この愛染明王像は日本の絵画としての愛染明王像としては、最古のもので、愛染明王像でかつ平安時代の作品とされているのは、これしかない。唯一無二のものである。昔、実見したが、かなり暗くなっている絵であった。現在は京都の細見美術館にある。あまり紹介されないようなので、1971年の最初のカラー写真(中央部分図)からデジタル化してみた。

 愛染明王は、
岩山三郎(1920年10月8日-1996年5月24日),『古代の没落と美術 ミイラ肖像画とその時代』(美術選書)美術出版社 1973
では、ヘレニズムのエロスの後裔ではないかと、推察されているが、その変化は大きすぎる気がする。 ヘラクレスの後裔が執金剛神というのは、納得がいくところだが、こちらは、ちょっと違うのではなかろうか?と感じている。

いずれにしても、日本で密教の神々明王のなか、忿怒の相を示す明王が好まれたというのは事実で、これについても中村元先生が、日本人の思惟方法、で考察されていた。このへんは日本人の宗教意識について、考えさせられるところが多い。

細見古香庵「欺し欺される話(真贋−152−)」、『芸術新潮』、第27巻8号、新潮社、1976年、126−130頁

posted by 山科玲児 at 08:17| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]