2023年01月21日

宋赤絵

宋赤絵.jpg



   繭山龍泉堂を訪ねたとき、宋赤絵が棚に飾ってあった。少し色が褪せているような感じもあったが、貴重な機会だと思って写真撮影させていただいた。この作品は、簑豊(ref2)にも参考図版としてあげられている。戦前に輸入されたものだろう。

  宋赤絵という名前になっているが、実際は女真族の国:金の領地の窯の作品である。そのせいか、器形は素朴な感じがある。模様より器形のほうがユルイ感じがある。鋭く引き締まった宋瓷が好きな人にはあまり合わないかもしれない。むしろ民芸風の味すらある。南宋時代と同時代だから「宋」といってもセーフかもしれないが、まあ「金赤絵」よりも美称なのだろう。

 赤絵陶磁器としては歴史上最初とされるこの宋赤絵は、良い状態で残っているものは希であり、断片でさえ珍重される。小山富士夫氏が骨董百話・5で「宋赤絵牡丹文陶片」を書いていた(ref1)。
小山>
遺品の数が少なく、わが国にざっと2,30点、アメリカでわたしが偶目したのは10点ぐらいのものだし、イギリスもほぼ同数である。中国では2,3点しか見なかったが、北京の故宮博物院の倉庫にはかなり宋赤絵があるときいている。

窯跡は見わたすかぎり無数の陶片が散乱していたが、宋赤絵は1片も発見できなかった。


宋赤絵は、なぜか小ぶりの鉢碗で内面だけに草花模様があるものが多い。それ以外の器形模様のものは、ただでさえ少ない宋赤絵のなかで更に少数である。ただ、南宋時代と同時代の金時代のはずの、宋赤絵といわれているもののなかには、時代がもっと降って元時代明時代になるものもあるという見解もあるようだ。
  宋赤絵と称する人形なんかは、どうみても、より新しい時代の産物にみえる。
こういう素朴な赤絵の作品はおそらく現代に至るまで作られ続けていたのではないか。

小山>
東京国立博物館には横河民輔博士が寄贈された宋赤絵が四点あるはずだが、

当方が最初にみた宋赤絵も、これの一つである。なお、常磐山文庫には魚模様の作品がある。

骨董百話でカラー写真を出した陶片は、
小山>宋赤絵の場合は繭山さんが何か他のものを買ったおそえに彬記からもらったらしかったが、その場で右から左へ私に下さった。私は何万という陶片を採集していたが、宋赤絵だけは1片ももたなかったのでうれしかった。そのとき彬記の話では山西省の[さんずい+路]安で出土したといっていたので、或いは山西省長直県の八義鎮窯でつくられたものかもしれない。


また、赤絵は痛みやすいので、摩滅して色がなくなったものもあるし、なくなった色を絵の具で補った偽物もあるという。この作については、繭山にいき、この宋赤絵鉢を裸眼で精査した。写真をみて、修理があるかもと思ったのは間違いだったようだ。 ベンガラ、銅緑の発色や溜まりは至って自然、縁近くなどに点点と釉薬はげがある。写真とイメージがかなり違う。
 川島社長の話では、10年に一度ぐらいしか市場には出ないものだそうである。たいていは小型の碗のような深い鉢である。内側にだけ模様があり外側には無いのが普通である。大和文華館に宋赤絵の壺があり珍しいと思っていたので、「あれも龍泉堂からですか」と訊いたら、そうなんだそうだ。下に著作権が消滅した写真からの画像イメージをあげておく(Ref3)


昔はいわゆる磁州窯系の窯ということで、磁州窯の特別展のときにも解説があった。

京都国立博物館の解説では、
https://syuweb.kyohaku.go.jp/ibmuseum_public/index.php?app=shiryo&mode=detail&data_id=4679
>河南省湯陰県鶴壁窯、禹県、登封県曲河、山西省高平県八義鎮、山東省徳州市の窯址でも陶片が採集されている。

とのことで、河南、山西、山東と各地で生産されているとのことだとすると、もっとヴァリエーションがあってもよさそうだが、あるいは見本品として、窯の経営者がもっていたものかもしれない。
今は、さらなる発掘調査でもっとよくわかっているのかもしれない。

ref1 小山富士夫、骨董百話・5 宋赤絵牡丹文陶片、藝術新潮 1969年5月号 84-85p、
ref2 Yutaka Mino, Katherine R. Tsiang.  Freedom of Clay and Brush Through Seven Centuries in Northern China: Tzʻu-chou Type Wares, 960-1600 A.D. Indianapolis Museum of Art, 1980
ref3  大和文華 第1号 1951年1月   宋赤絵壺 10.5cm高

宋赤絵P62 1st volume2.jpg

posted by 山科玲児 at 04:29| Comment(0) | 日記
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