
オリエンテーションズの最新号は、英国の東洋美術研究者ジェシカ ローソン夫人Mrs Jessica Rawsonの七〇歳紀年 特集である。
表紙は1972年の写真だから三〇歳のローソン夫人である。これはきつい顔だが、他の写真をみると、ずいぶん綺麗な人当たりのいい人なんだろうな。と思わせるものがある。1975年のロンドンでの大規模な古玉展にも名を連ねているので、そうとう若いころから名をあげていたのだろう。
ローソン夫人の著書というと大英博物館の中国美術ガイドブック
The British Museum Book of Chinese Art
http://www.amazon.co.jp/The-British-Museum-Book-Chinese/dp/071412446X/ref=sr_1_2?s=english-books&ie=UTF8&qid=1356479636&sr=1-2が
がまず思い浮かぶ。
どうも古美術のみかたが少し違うなと思ってあまり読まなかった本だ。
また、サックラーコレクションの青銅器図録編集というのも、これだけ大きな本を出す意味があるのかなあ、と思ったものだった。まあ、財団の意向が大きいのだろう。
なんというか、鋭い鑑識や美意識、時代性に対する感覚というよりも、古美術をもっと別のアングルからテーマ研究、図像研究,民俗学のようにあつかうようなセンス、、こういう見方は1990年代から流行ったように思うが、そういう感じがうかがわれる。
まあ、あまりきつく鋭い意見の見方の人物:下手をすると独善に陥ってしまう可能性すらある人物より、少し大きく構えて、やや甘い感じではあるが応対する人物のほうが ディレクターとしては優秀なのかもしれない。
ただ、下手をすると理論が砂上楼閣になる危険もある。
中国古代美術を中心に研究した夫人のインタビューの最後の写真が、A momennt of Reflection(沈思の時)と題された、「日本」の秋景を和室から観る夫人の後ろ姿であったのは、興味深い。やはり中国美術は色々な意味できついものだから、ローソン夫人でも、日本文化の安息に触れたくなるのだろうか?