2018年12月31日

行穣帖の表装布

行穣帖 KESI表装布 (1).JPG


行穣帖のことをさっき書いたが、 2013年書聖 王羲之展 でみた行穣帖では、表紙布(イメージ)
がなかったのだが、
 NewJersey, Princeton大学美術館のサイトでみると、別に保存しているようである。
  王羲之(唐代[8,9世紀]の模写本・原本は4世紀):行穣帖

  Ritual to Pray for Good Harvest (Xingrang tie

これは宋時代の布だとされていて、これ自体も貴重なものなので、巻物を扱うたびに手にふれてしまうから、剥がしてしまったのかな??? できたら、もとのままのほうが良いのだが。

イメージは、文雅堂がつくった複製からとりました。ただ、現在はすでに改装されてしまっているので現状とは違います。  この時点でのカラー写真はあるかどうかわからないけど、一応、これしか知りません。









posted by 山科玲児 at 11:03| Comment(0) | 2018年日記

顔真卿 王羲之を超えた名筆 続2

争座位s.jpg

肝心の顔真卿は、
第3章 唐時代の書 顔真卿の活躍 ―王羲之書法の形骸化と情感の発露―
に入ってます。

真蹟としては、今回、イチオシの
台北故宮の 祭姪文稿
でしょう。これは、まあ文句はないのではないかと思います。
西川寧さんが冒頭の印の左端を徽宗皇帝の双龍円璽のなごりじゃないか?といわれていたことも思い出しました。しかし、表装を切ってしまうのはもったいないね。
最近でも、王羲之行穣帖のように表紙部分を改装してしまった例もある。

建中告身は、どうもあやしいが、古い伝世があるものではある。明末以降のつくりものではなさそうだ。

拓本では、最近 河南省ででた墓誌の拓本がある。王琳墓誌というのは同じ墓から2つでたものだということだが、なんかよくわからない。この時期に河南省のここらで、有名人が書いた墓誌が連続して出ているのだが、なんか怪しい感じすらするくらいである。
93  王琳墓誌 顔真卿筆 1幅 唐時代・開元29年(741) 埼玉・淑徳大学書学文化センター 1/16〜
1/27、2/13〜2/24

94   王琳墓誌 ―天宝本― 顔真卿筆 1幅 唐時代・天宝元年(742) 埼玉・淑徳大学書学文化センター 1/29〜
2/11
95   郭虚己墓誌 顔真卿筆 1幅 唐時代・天宝8年(749) 埼玉・淑徳大学書学文化センター  

古拓では、書道博物館所蔵の争座位帖がある。ここには3点以上あるんだが、たぶん一番古い、いわゆる北宋拓が展示されているものと思う。これは結構良いものだと思っている。ほかの2点はちょっといただけないので、こちらが展示されていることを期待する。

イメージは旧拓争座位帖

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posted by 山科玲児 at 09:14| Comment(0) | 2018年日記

2018年12月30日

顔真卿 王羲之を超えた名筆 続1


東京国立博物館で特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」
2019年1月16日(水) 〜 2019年2月24日
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1925
展示リスト
https://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=5697
特設サイト
https://ganshinkei.jp/
について、続き、、

第4章 日本における唐時代の書の受容
ってのがあり、宮内庁、大師会、陽明文庫などの寧楽平安の赫々たる有名なものが展示されるのは良いのですが、
室町、江戸期での顔真卿書法の影響というのが閑却されてんじゃないかなあ?? と思いました。
例えば、雪舟は争座位のような行書書いてますし、日本の禅僧の墨跡にも顔真卿書法はあるでしょう。佐久間象山は争座位一辺倒でした。佐久間象山の碑はもろそれです。あるいは常設展のほうで、そういう関連展示があるのかもしれません。

第五章 宋時代における顔真卿の評価
で、日本にある北宋時代の素晴らしい名蹟が並んでます。五馬図巻もその一つです。ただ顔真卿と関係ないんじゃね?? というものが多いように感じました。しっかし、多くが重文なのに、黄山谷の草書  李白憶旧遊 は指定なしなんだね、、これは何度も観賞した劇跡で、北京やメトロポリタンのものなど足元にも及ばない傑作ですが無指定は危ないなあ。。サインがないから、という話もありますが、大阪市立の「李白仙詩巻」もサインなしでも重文なんだから理由にはならないでしょう。

第六章 後世への影響、はつけたりっぽいですね。あまり頑張っていません。
 伊墨卿はよいとして、清朝の銭エイなんかもろそれなんだから、あってもよかった。

posted by 山科玲児 at 09:39| Comment(0) | 2018年日記

顔真卿伝

特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」
2019年1月16日(水) 〜 2019年2月24日
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1925

にちなんで、一昨日触れた「五馬図巻」(羽鳥書店 )をはじめとして、色々、便乗出版があるようです。東博の冨田さんも「王羲之と顔真卿: 二大書聖のかがやき」(平凡社)という図録本のような大型本を出版されるようですね。著者は出したいと思っていた本でも、出版社は、こういう便乗の機会でなければ赤字になってしまうので出版できなかったものが、便乗とはいえ機会を得たことを喜びたいと思っております。

顔真卿伝 時事はただ天のみぞ知る 
 吉川忠夫著
四六判 203頁 2019

  伏見冲敬先生は、顔真卿については、あまりよく思っていなかったようで、悪口を書きたいが書けないようなことを書いておられたようです。董其昌ほどではないでしょうが、無闇にもちあげらた人物の場合、闇の部分はあるでしょうから、善悪、美醜、清濁ともに観て評価する評伝があってもよいと思っています。 吉川先生の評伝は果たしてどうなんでしょうねえ。来年出版ですから、内容はわかりません。




posted by 山科玲児 at 08:37| Comment(0) | 2018年日記

2018年12月29日

顔真卿 王羲之を超えた名筆


来年1月から、東京国立博物館で特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」
があり、なんと、台北故宮の 祭姪文稿、懐素の 自叙帖、草書千字文が 出るそうである。
2019年1月16日(水) 〜 2019年2月24日
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1925
展示リスト
https://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=5697
特設サイト
https://ganshinkei.jp/
草書千字文は、まだ「寄託」というあつかいのようだから、蘭千山館:林柏寿氏の関係者もしくは法人が所有しているのだろうとおもう。
蘭のほうの黄絹蘭亭も出ることになった。これも寄託となっているようだ。実見したとき、古いことは確かだ、という感じはした。蘭亭の系統ではかなり特殊なものではある。
 古屋圭司議員が尽力され、つくった法律が生きているので、台北からの借りだしも可能になったということであろうが、このように「台北 國立故宮博物院」を冠しない展覧会でも借りだしが可能になったのはありがたいことである。
 そして書道博物館の建中告身 もでる。ちなみにこの告身の箱はものすごく凝ってます。
  懐素の 自叙帖、草書千字文については、いろいろ疑念があるのはもっともである。当方もなんども実物を観たが、多少の疑念はやはりあるとおもう。ただ、もし自叙帖が生き残っていなかったら唐代の狂草というもののイメージを実物でつくれたどうか疑問で、たとえ臨本模写本でも残ったことを幸いとしなければならない。
  一方、草書千字文のほうはもっと複雑で、真跡という意見も昔から多いし、北宋 徽宗皇帝の印章はまともそうにみえるから伝世を北宋までさかのぼる名蹟であろう。ただ、これにもいろいろな異論はあるようだ。少なくとも末尾のサインの1行と本体の間に絹の継ぎ目があるようにみえるのが不審である。

 この展示会、顔真卿 主体というより、唐時代を中心とする中国の書の展覧会というべきものだとおもう。
 近年発見された王羲之の模写本  妹至帖、大報帖も展示される。小川家の真草千字文も展示される。
月儀帖 については、これは、もっと後世の模写本だとおもう。書風 印に問題が多いことですぐわかるのだが、唐時代の模写本だと推定できる台北故宮本と比較すると、小楷の異体字が新しい時代の書体に替えられていることも特徴になる。
賢首大師尺牘は、天理にあるのが、より良いもので、こちらは明らかに模写本だ。
 青い紙に書いた神仙起居法は、まあまあだが、やはり北京故宮本のほうが多少良いと思う。大陸での紹介では北京本の画像を間違って使用していた。

世説新書、荘子唐抄本二巻をはじめ日本にある唐抄本の多くが展示されるようである。

唐末五代の廃仏と内乱は、文化財にとっては大災厄で、唐代までの伝世書画はほんとうにない。台北故宮でも、北宋までの書画は、そこそこあるが五代唐になると数えるほどになってしまう。
そのため、石碑の拓本、石などに彫った法帖の拓本などが重要な資料になる。
古いところでは泰山刻石百六十五字本などは無二の墨宝だと思う。
犬養本  定武蘭亭は、異論があるようだが、國学本というカテゴリーにいれるのが妥当だと思う。
上野本  十七帖もでるようだ。これはいじったところが多いそうだが、現物を実見すると上品で好ましい感じのする古拓である。まあ、ヒストリシティーというか伝世の味というか、そういう香りがする。
重文の  啓法寺碑 拓本は天下にこれ一册しかないというものだが、名前のわりにそれほどでもないように感じている。そうはいっても、たぶん実見していないので実見したら印象は違うのかもしれない。もとは讃岐の大西家だったと思うが、今どこにあるのかはわからない。
また、今回拓本については、香港大学北山堂コレクションからのレンタルもあるのが嬉しい。
九成宮の旧拓が六点も展示されるのは素晴らしいが、そのなかに香港からの一点もある。このうち天下第一本は顧文彬旧蔵のもので、非常に古い感じはするが破損・修理も甚だしいものだ。
香港から来た、麻コ仙壇記  何紹其  所蔵本というのは、あの小字のもので、昔から有名なものではないだろうか。大字麻姑仙壇記 だったようです。これは違ったな。

 長くなるので、まずこれくらいで、「続」にまわすことにする。
posted by 山科玲児 at 12:18| Comment(0) | 2018年日記

停電しました

なぜか、午前七時、まだ暗いときに停電しました。
建物の一部だけの停電でした。
大家とも連絡つかないし、九州電力に電話して対処してもらって40分ぐらいで回復しました。

やはりね、万一のときの対応の速さというのは、九電のほうが早いと思うんだよね。
いま、いろいろ電力自由化、安いよ、というセールス多いけど危険かも。。

なんせ、冬に、暖房が全部ダメになるし電話機も使えん。ケータイでようやく連絡、、
という惨状でした。もう少し安全保障やっとかないといけないなあ。。


posted by 山科玲児 at 08:51| Comment(0) | 2018年日記

2018年12月28日

五馬図巻の複製

五馬図巻のカラー原寸複製を本の形で刊行するようです。
高いし、ややマイナーな出版社なので、私家版っぽい感じがありますね。
まあ巻物にする必然性は必ずしもない絵だとは思います。
編輯の板倉聖哲さんは、まあ普通というか、才走った人
ではないが、あまり変なことは言わない無難な人なので、まあいいのかな。
小川氏なんか最悪ですからね。

李公麟「五馬図」 - 羽鳥書店 Web連載&記事
羽鳥書店>2009年に創業し、芸術・人文・法律を中心とした書籍を出版しています。2018年11月末現在、刊行点数73冊。
  
posted by 山科玲児 at 08:30| Comment(0) | 2018年日記

2018年12月27日

マスコミとカルロス・ゴーン

こういう話もあるようです、
Twitterアカウントのっとりとか、虚言癖のある人でもないようなので、
ありそうなことだと思います。

元東京地検で弁護士、作家の落合洋司氏のツイートから
https://twitter.com/yjochi/status/1077148129063890944
落合洋司 @yjochi

テレビに出て、ゴーン氏の特別背任は先行き厳しい、有罪無罪は五分五分くらいではないかと
いう話をしてほしい、と某テレビ局から言われ、特捜部はそれなりの証拠を確保して着手しているはずで、
8割、9割くらいは有罪だと思うと言ったら、出演は無しになった。笑
posted by 山科玲児 at 08:03| Comment(0) | 2018年日記

五馬図巻の出現

五馬図巻 t (1).jpg  五馬図巻コロタイプ.jpg

日米戦争中に焼失したと思われていた、70年間以上ほとんどだれも観たことが無かった五馬図巻が出現・公開される。生きていれば、驚くようなことに遭遇するものだ、と思う。 昔、某教授に行方を尋ねたときも、「実物を観た人で生きてる人は私ぐらいかもしれない」というような話だった。
2013年ごろの論文でも「幻」「行方不明」ということになっている。

黄山谷跋、李公麟筆「五馬図巻」の伝来について : 北宋士大夫間における享受から清朝内府流出と日本流入までhttp://jairo.nii.ac.jp/0069/00036283


特別展「顔真卿―王羲之を超えた名筆」の出品リストに東京国立博物館所蔵ということでのっていて、多少驚いたが、イヤイヤ、つまらない模写本かもしれない、関係者に問い合わせないと、と疑い深くサイトをみていたら、

【公式】特別展「顔真卿―王羲之を超えた名筆」
の「みどころ」のところに部分的ながらもカラーイメージがあり、、どうも本物らしい、、となって
思わず赤ワインTISDALE  ピノ・ノワール(カリフォルニア)を1本空にしてしまった(もっと良いワインがあったならそれになっただろうが、手近なものになった。)。
一夜明けて、これを書いているのだが未だに信じがたい。

戦前の写真とイメージで部分拡大で比較対照した。少なくとも印の位置や線描は一致している。ただ、こういうとこまで忠実に模写して偽物をつくって売った偽物作りが戦前いて、フリーアの秀野軒図巻は、その傑作だそうだから、疑えばきりがない。

この五馬図巻の古い精密なモノクロ写真 巻子本の全体は、ほぼ4年前2015年1月7日に紹介した

この特別展サイトのカラーイメージは、世界最初のカラー写真かもしれない。

どうも 墨だけでなく、多少、淡彩も併用してるようなのにも驚いた。冒頭の胡人の顔、馬の馬具が「赤」なのである。もっとも、ボストンの「帝王図巻」の例もあるから、20世紀初期の加筆保彩という可能性もある。

この五馬図巻は、李公麟の唯一の真蹟と呼ばれてきたものだが、70年近く行方不明だったものだ。ここ20年の東京国立博物館の新収品としてはベストのものだと、考えられる。現在、中国絵画が高騰しているのだから、X億円ぐらいは購入価格として出したのではなかろうか? 本物だとしたら、東京国立博物館にある北宋時代の有名人の絵画としては唯一のものになると思う。無名人のものはあるかもしれないが、有名人の有名作としては唯一だろう。


  中国絵画の専門家がほとんど引退・物故してしまったせいか、この重大事件をだれも騒がないのは、まったく不思議なことだと思う。今回の特別展では、台北故宮からのレンタルもあるので、今回、台北故宮関係者も来日するだろうから、台北での雑誌や故宮文物月刊あたりに特集がでるかもしれない。


posted by 山科玲児 at 05:54| Comment(9) | 2018年日記

2018年12月26日

ニューヨークの「聖母マリアの夕べの祈り」


ニューヨークのTENET Vocal Artistsが、
シャルパンティエのルソン・ド・テネブルを演奏した動画をみつけましたが、
クリストフ・ルセによる優れた演奏とは見劣りがすると前、評価したことがあります。、
2017年02月08日
ルソン  ド テネブル
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/178695140.html

しかし、再度聴きかえしたんですが、それなりに頑張っているようですし、別の解釈も聴きたいと覆います。
Premiere lecon du Vendredi saint H. 105, Charpentier  TENET Vocal Artists - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tYPMsUq8nv4

実は、このグループ
TENET Vocal Artists
http://tenet.nyc/store/
の最近の大きな仕事は、
モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」の演奏なようです。
これは動画があるんですが、かなり面白いものです。

モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」は、私は高く評価していて、色々なCDももっております。
福岡古楽音楽祭でも、これ、やって欲しかったなあ。ロ短調ミサじゃなくて。
この曲集で最も輝かしいマニフィカート は3つの動画に分割されてます。

ううん、かなり特色がありますね。まずピッチですが、かなり低めのようです。この曲のピッチをどうとるかということは、昔からかなり問題で、というのも楽譜通りに演奏すると高すぎて演奏できない、というので色々説があります。
ラ・ヴォーチェ・オルフィカ 杉村 泉さんの解説17回のときhttp://voce.main.jp/Keireki/13thVespro/13VesproKaisetu.htm
20回のとき:: http://voce.main.jp/Keireki/20vepro/20thprogkaisetu.htm

そのせいか、バスがとても大きく強調されているようで、異様なくらいの重低音がめだちます。
バスの人、かなり張り切ってるんだなあ。。
その一方、ソプラノがちょっと弱気になっていて見せ場でも派手にやってないですね。
まあ、「聖母マリアの夕べの祈り」では、色々な演奏解釈の変化を楽しむというところが大きいので、
新しい演奏動画が出たのは有り難いことでした。長らく鳴かず飛ばずだったアメリカの古楽もようやく元気になってきたかな。

posted by 山科玲児 at 09:21| Comment(0) | 2018年日記