2018年01月15日

はじめてのルーブル  続2

はじめてのルーブル.jpg

中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html
で、ひっかかったところを更に追加しておきます。

17章
レオナルド  ダヴィンチの話  巌窟の聖母の件::
17章>
最初に描いた作品は依頼者が受け取りを拒否したため、巡り巡ってルーブルに収まった。
  岩窟の聖母のトラブルは、関係文書そのものまたはその写しが残っているので、この記述が誤りであることが明らかです
* 修道会が受け取り拒否 **
したわけではありません。
  経費がかかりすぎてしまって赤字になってしまったのでレオナルド側は、追加支払いをするように要求し交渉したんですが、それがミラノ公爵イル・モーロへの訴えになり何十年もかかった訴訟になってしまいました。ミラノ公爵がやったのかレオナルドがやったのか知りませんが絵はフランス王のもとにわたってしまいました。これがルーブルのヴァージョンです。結局レオナルドはもう一枚絵を描いて納品することで決着しました。これがロンドンのヴァージョンです。こちらは弟子のブレディス兄弟が主に制作し、レオナルドは仕上げや指導などに関与しただけだと思われます。


12章
   ファンアイクの「ロランの聖母子」がオータンの教会にあって、一般信徒がこれを礼拝することを強制されたように書いてますけれど、勘違いじゃないかな。 60cmという大きさからいって、主祭壇の真ん中にあったわけではなく、もとはロラン家の邸宅にあり、のちにオータン大聖堂のロラン家の礼拝堂に飾ってあったのでしょう。礼拝堂というのは独立した建物ではなく、大聖堂の壁に作られた大きな壁がんニッチのような建築構造物 :扉のない小部屋のようなところで有力者一族の墓でもあり、そこで祈祷をするところでもある。一般信徒はむしろ入ることができないところです。これは、西欧の古い大きなカトリック教会を訪ねればいやというほどあります。
  まさか、中野先生がこういう教会に入ったことがないということはありえないでしょうから、勘違いじゃないかな。


posted by 山科玲児 at 06:08| Comment(2) | 2018年日記

2018年01月14日

私的宗教画リスト 下

Latour Nativity Renne.jpg 



フーケ 天使にかこまれる聖母子  アントワープ王立美術館


  ううん、これはちょっと宗教画としてはあまりにも「とんで」いますが、どこに置きようもないけれど、落とすには惜しいので採用。



ヘールトヘン=トート=シントヤンス 聖誕

神秘の夜のクリスマス

ヒエロニムス・ボス  十字架を運ぶキリスト  ゲント美術館


 画家の帰属について最近異論がでているようだが、仮に追従者作品になったとしても、傑作には違いない。というより16世紀の「十字架を運ぶキリスト」の絵でこれより優れたものがあるだろうか? どの画家にアトリビュートしても代表作になるだろう。


ヒエロニムス・ボス  聖アントニウスの誘惑  プラド美術館


リスボンの聖アントニウスの誘惑は傑作だが、宗教画というより象徴・寓意画のようにみえるので、こちらを選ぶ。



ヘラルト・ダヴィッド ミルク粥の聖母子、ブリュッセルの王立美術館


  これだけ親しみやすい聖母子像があるでしょうか、、


ミヘール・コクシーMichiel Coxie (1499 - 1592)  聖家族 クロレミュンスター修道院、オーストリア

修復動画https://www.youtube.com/watch?v=vpWTJLj0zho


驚くほど優雅な作品です。パルミジャニーノ以上かもしれないなあ。

クロレミュンスター修道院ってのは、オーストリアハプスブルク家の人々の隠退所みたいな機能ももってました。



デューラー  四人の使徒 1526年、アルテ・ピナコテーク ミュンヘン


これを肖像画にいれてる人(某)がいるけど、どっちかというと擬人像じゃないかなあ。理念を人間像の形に具体化したもんじゃないだろうか? そりゃモデルはいると思うけれどデューラーの意図はそれと違うでしょう?? それに普通四人並べるとき中世以来の伝統ならマルコ・マタイ・ルカ・ヨハネでしょう。これはヨハネ・ペテロ・マルコ・パウロで全然違う。



デューラー  祈る手の習作 アルベルティーナ  ウイーン



コリン  コテール  聖ミカエル ブリュッセルの王立美術館


 ロヒール命な倣古的な作品ですが、成功していると思います。ボーヌ祭壇画は保存が悪いからなあ。。


クウェンティン  マーチエス 玉座の聖母子 ブリュッセルの王立美術館


 これも1世紀前のフレマール派を慕った倣古的な作品ですが聖母の堂々たるガウンの体躯描写がすごいので。。また、幼児キリストの好奇心あふれるまなざしがなんか妙にモダンです


ピーテル・ブリューゲル(父)  聖母の死  グリザイユ  英国バンベリー・アプトンハウス:ナショナルトラスト


ブリューゲルの絵のなかで、これほど真摯な信仰告白があるだろうか



ルイス・デ・モラーレス(1515-1586) 聖母子  エルミタージュ、ペテルスブルク



いかにも、スペイン女性らしい顔のようにみえるのだが、単なる先入観かもしれない。


グリューネワルト  イーゼンハイム祭壇画、ウンターリンデン美術館、コルマール



観たいような観たくないような。。。


ティントレット  最後の晩餐  サンタ マジョーレ教会  ヴェネチア


エルグレコの先輩というか、不思議な作品だなあ、と思います。とくに、透明な天使たちの描写が惹かれます。

エルグレコ  受胎告知  プラド美術館

  ビルバオに、ほぼ同じ絵がありますが、プラドのほうがいいかな?  熾烈な霊的火花を感じます。まさに反宗教改革の力かな。 小型のレプリカがティッセン・ボルミネッサ美術館にあります。 どうもエル・グレコは、こういう小さなレプリカを自宅において記録にしていたらしい。描いた絵を皆素描で記録して、のちに出版したクロード・ロランを思い起こしました。



       腕が印象的でした。




ムリーリョ  無原罪のおやどり  エルミタージュ美術館、ペテ1ルスブルク


1996年 エルミタージュ美術館展 16-19世紀スペイン絵画:東武美術館で鑑賞

   ペテルブルクには2点  同題の大型のムリーリョ画があります。でも、この、18世紀に英国のウォルポール伯爵Robert Walpore(初代首相)が所蔵したことがあるこの作品The Walpole Immaculate Conceptionのほうが、良いと思っています。




  なんというか、絵画の中で永遠化された人間達、という感じがする傑作です。そういう意味では肖像画と宗教画の際どい交錯という感じもします。



    昔、 これのベルリンヴァージョンを白黒写真を観ていっぺんにファンになりました。ルーベンスとは全く逆の発想ですね。


            (イメージはこれです)


       日本にあるのが、もったいないくらいの良い作品ですね。


 なんか観た覚えがあるのですが、、たぶん何度か開催されたエルミタージュ展で、、


フィリップ・ド・シャンパーニュ、ヴァニタス(頭蓋骨のある静物)


   こういう気味の悪いものも、キリスト教の瞑想のためのツールなわけです。マグダラのマリアが頭蓋骨を前に瞑想している絵はしばしば観るところです。 金剛杵が真言密教の仏教美術なら、こういう絵もやはりキリスト教美術の一つだと思います。シャンパーニュの絵にはジャンセン主義の影響が強いので苦行の強調と関連しているのでしょうか?



カスパール・ダヴィッド・フリードリッヒ  山上の十字架、 ドレスデン,国立近現代絵画館


オディオン  ルドン  聖ジャンヌ=ダルク  ヴァチカン美術館


  ルドンの作品では、ヴァチカンに入っていることもあるけど、一番  宗教画らしい。




なんか、近代の聖書のイメージ、天使イメージなどは、このジョン・マーチンの絵にかなり影響されてるんじゃないか?と思っています。




  キリスト教というより、もっと危ない、オカルトに足を突っ込んだ画家の作品。

これをあの雅な古都・観光都市のブルージュの、それもファンアイクなどの名画が並ぶグロニンヘン美術館の展示の最後で観たのは衝撃でした。




     画家が、自分が贋作したことを証明するために獄中で証拠制作したという、 非常に皮肉な作品です。ある不気味さと個性を感じる奇妙な宗教画ですね。


・サルヴァドール=ダリ、十字架の聖ヨハネのキリスト(1951)、ケヴィン=グローブ美術館、 グラスゴー


いうまでもないことですが、「十字架のヨハネ」というスペイン人のカトリックの幻視者・聖人が感得したキリスト磔刑のイメージです。間違えている人もいたので。



posted by 山科玲児 at 10:05| Comment(0) | 2018年日記

私的宗教画リスト 上

St Ursula shrine.jpg


 20171228日に、 未完成稿を書きましたが、一応これで完稿とします。


テーマで見る世界の名画全十巻の第四巻
http://gakugei.shueisha.co.jp/artgallery/
https://www.shueisha.co.jp/artgallery/vol04.html
宗教画
に触発されて、私的セレクションしてみます。7点ぐらいしか重複しておりません。

   西洋絵画で、キリスト教絵画というふうに限定されたものだと解釈するのが普通だろうから、それを前提とします。 宗教絵画でも美術的に稚拙で美術的価値のないものは、絵馬とか御札とかいくらでもあるのだから、そういうものは除きます。 また美術的価値が高い傑作でも宗教的思想的訴えや感情が薄いものは除きます。



全部実見したものにしたかったのですが、やはり捨てがたいものもあるので

実見していない作品もいれました。それはをつけておきます。


で、リストです。



アンドレイ  ルブリョフ 至聖三者のイコン トレチャコフ美術館、モスクワ 


ランブール兄弟  いとも豪華な時祷書、コンデ美術館、シャンテイー
 聖母戴冠


堕天使の墜落


ローアンの時祷書、パリ国立図書館

 死者と神



フラ・アンジェリコ  受胎告知(大、壁画) サンマルコ修道院、フィレンチェ、  フレスコ


ヒューベルトとヤンファンアイク兄弟:: ゲント祭壇画



・ロヒール 十字架降下  プラド美術館



ペトルス・クリストス、 枯木の聖母子、  ティッセン ボルネミサ美術館、  マドリード

ほんとに小さな絵ですが、神秘的です。



マサッチオ 償いの金 ブランカッチ礼拝堂  フィレンチェ



フラフィリッポ リッピ バルトリーニ トンド(聖母子と聖アンナ) ピッティ


ボッテチェルリ  マニフィカートの聖母  ウフィッティ


豪華絢爛な最盛期の作品ですね。


ボッテチェルリ 《神秘の降誕》ボッティチェリ,サンドロ ロンドン  ナショナルギャラリー


ボッテチェルリの苦悩がある解決を求めたようなメッセージ性がある絵画



メムリンク  ヨハネ祭壇画 中央画面、メムリンク美術館、ブリュージュ


メムリンク  乙女たちを保護する聖ウルスラ(イメージ)、メムリンク美術館、ブリュージュ


カルロ  クリベッリ モンテフィオーレ祭壇画(ブリュッセル、ロンドン、モンテフィオーレデルアッソに分蔵)

  


ペルジーノ  聖母被昇天  サンティッシマ・アヌンツィアータ教会 フィレンチェ


  3m以上という、とにかく大きく甘美な作品です。実は画家の真蹟かどうかはちょっと怪しいらしいけれど、いかにもペルジーノらしい。


ヴェロッキオとレオナルド  キリストの洗礼 ウフィッチ  フィレンチェ


なんか、このテーマの典型の絵になっているような気がします。


レオナルド  ダヴィンチ 聖アンナのいる聖家族 カルトーネ  ロンドン  ナショナルギャラリー


ルーブルにある油絵の完成作よりもこちらのほうに魅力を感じました。


ミケランジェロ  アダムの創造 システィナ、ローマ

  まあ、これは。典型を作ったものですし。


ラファエロ  美しい女庭師 ルーブル


  理想型ですね。文句なし。

マンテーニャ,  聖エウフィミア、カピディモンデ美術館、ナポリ


個人的に凜としたこれが好きなので



ジョヴァンニ・ベッリーニ、  牧場の聖母子、  ナソナルギャラリー  ロンドン


ミラノのブレラにある作品も良いのですが、こちらの方が保存がよいのか補修が良いのか綺麗にみえます。

ポントルモ カポーニ礼拝堂壁画 サンタ  フェリチタ  フィレンチェ

https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Descent_from_the_Cross_by_Pontormo


https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Santa_felicita,_annunciazione_di_pontormo.JPG


最初に感動したイタリア ルネサンス絵画がこれでした。京都でみました。


(文字数制限のため、、下に続く)


続きを読む
posted by 山科玲児 at 09:49| Comment(0) | 2018年日記

スマルト

元 青花 魚藻壷  安宅 detail.jpg


昨日(2018年1月13日)書いた
「悪女グリート」のなかの、
「青でスマルトを使っていたので、褪色した」という件で、コバルトで発色した青ガラスが褪色するもんだろうか?という疑問があり、またスマルトは明代景徳鎮青花陶磁器とも関係があるので、色々調べてみました。
  まず、「絵画鑑識事典」(REf1)によると、スマルトの褪色は、いつも起こるのでは無く、特定の状況下で起こるもので、「青色の病変」というものらしい。天然ウルトラマリン、アズライト、スマルトなど青色顔料を使ったとき、たまに起こるものらしい。どうも顔料そのものの褪色ではなく、周囲の乾性油の部分で変成がおこり細かいひびなどで屈折や光の透過が変わるためのようだ。なんで「青」だけに起こるのか?よくわからない。あるいは、青の顔料は粒が大きいせいかもしれません。

 このスマルト  絵画材料事典(ref2)では、1540年ごろの発明ということになっていて、ホルバイン(1498年?ー1543年)の使用例があるので実際はもっと早く1500年ごろから使用されたのか?という記載もされている。ブリューゲル(1525? -1569)は十分使用できたと思います。
 ブリューゲルの孫世代のルーベンスは相当たくさん使用しているようですが、褪色していないものも多いので、油絵の技術(使用した油などの違い)や保存環境にもよるのかもしれません。

 米国 リングリング美術館の「ソドムを去るロトとその家族」
 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Flight_of_Lot_and_His_Family_from-Sodom_by_Peter_Paul_Rubens,1613-15._Oil_on_canvas.From_the_Ringling_Museum.jpg
の輝かしい青はスマルトなんだそうです(ref4)

  スマルトという名前は、中国古陶磁では、意外によく知られております。蘇麻離青という中国名まであって明らかにイスラム圏からの輸入品であり、日本で言う染め付け、中国でいう青花の発色剤として、とくに元時代・明時代前半などで多く使われたとされております。
  大阪市立東洋陶磁美術館にある、元染め付けの壺の部分をイメージにしてみました(当方の撮影写真)。
 その後、中国国内産の呉須が多く使われるようになって輸入品でもあり、あまり使われなくなったようです(ref3)。
 14世紀ぐらいから輸入されてたみたいだから、西洋でも、もっと早くから画材として使用されていたんじゃないか?とも思いますが、もともとは青いガラスなんで細かく砕くと色が薄くなってしまうところが難だったのかもしれません。
ref.1  クヌース・ニコラウス,黒田夫妻訳,絵画鑑識事典2nd ed., 1990, 美術出版社
ref2. ラザフォード・J. ゲッテンス, ジョージ・L. スタウト,  絵画材料事典 ,  翻訳 森田恒之,  美術出版社, 1999
ref3. 内藤 匡, 改訂 古陶磁の科学, 二玄社, 東京, 1986
ref4 下山 進,  文化財の非破壊分析から得られる情報を活かす.  文化財情報研究 
posted by 山科玲児 at 08:19| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月13日

ブリューゲルの修復



アントワープのマイヤーファンデアベルヒ美術館の看板


が修復中のようです。

    とすると、ウイーンには貸し出さないな。

修復作業の件をマイヤーファンデアベルヒ美術館のClaire Baisier 館長
.が解説している動画がありました。

修復作業に関係する調査で次のことがわかったそうです。

・Prof Martens によると、題名  DULが書いてあったので、DULL Griet という題名は当初かららしい。

・青顔料としてスマルト(花群青)を使ってあったので、現在は青が褪色してしまっている。これを
戻すことができたら、相当 現在とは 変わった画面になるでしょう。


posted by 山科玲児 at 20:12| Comment(0) | 2018年日記

忘却されていたブリューゲル

Breugel Marijnissen  ss.jpg

中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html
を読んで、またひっかかったのは、
カラヴァッジョのことを書いた13章の中で

13章>生前から現代に至る数百年間、評価も人気もぴくりとも揺るがないミケランジェロ、ティティアーノ、ブリューゲル、ルーベンスなどの凄さを、改めて認識させられよう。
というところです、ブリューゲルを入れるのは、明らかに筆が滑ったのでしょう。



>18世紀から19世紀になると、ほとんど顧みられることがなかった。
 ソース:: 森洋子 ピーテルブリューゲルの芸術 1968 みずえ No.53に掲載

>18世紀全部と19世紀の大部分で長く忘れられていた

 拙訳 ソース P. Bianconi,Tout l'oeuvre peint de bruegel l'ancien , Flammarion, 1968, Paris

ブリューゲルの作品として有名で、サインもあるブリュッセル王立美術館にある  反逆天使の墜落(天使と魔物の戦闘)  (イメージのマレイニセンのブリューゲル本の表紙カバーに使われています)は地獄ブリューゲルの作品というふれこみで、1846年に、500フランで美術館が購入したものです(REF1)。

   その14年後に、ミレーは「晩祷」  をベルギー人Victor de Papelenに1000フランで売り、それが世紀末ごろには75万フランになって世界一高い絵と称されておりますから、当時の500フランというのはそうとう安いんじゃないかと思います。

  アントワープのマイヤー  ファンデアベルヒ美術館の「悪女グリート」は、1894年ケルンのオークションで 390マルクで買いました(REf1)。
   フリッツ・マイヤー  ファンデアベルヒ以外、だれも入札しなかったので、最低値だったそうですが、390マルクというのもはそうとう安い価格のように思えます。しかも、現在 傑作として賞賛されているこの絵をマイヤー以外、だれも入札しなかったとは。。。

 ちなみに、スペイン政府が、最近、買い上げた「聖マルチヌスのワイン」は、ブリューゲル最大の大作ということもありますが、約10億円ぐらいだったと聞いています。これは国外に出さないというようなこともあって、このへんで落ち着いたのでしょう。

   これから考えてブリューゲルの評価が19世紀に高かったとは思い難いところです。実際、ブリューゲルについての18世紀以後、最初の研究は1869年のドイツ人ワーゲンGustav Waagen(ベルリン美術館館長)の記事6P(遺稿)です(Ref1)。

   また、ミュンヘン  アルテピナコテークの「怠け者の天国」は、なんと1917年の購入です(REf1)。他のルーベンスの傑作などが、18世紀以前のバイエルン選帝侯の収集であることと、ずいぶんな違いがありますね。

   REF1.  P. Bianconi,Tout l'oeuvre peint de bruegel l'ancien , Flammarion, 1968, Paris
  絵の名前は森洋子 ブリューゲルの世界、とんぼの本、に倣いました。こういうのは統一しとかないと、、


posted by 山科玲児 at 07:17| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月12日

はじめてのルーブル  続1

はじめてのルーブル.jpg

中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html


  なんといっても、笑ったのは、ルーベンスのマリー・ド・メディチス連作について、
第6章>
かくもどうでもいい人物を、かくもドラマティックな粉飾のもとにヒロインへ仕立て上げた画家の並外れた力量の凄さを。

で、マリー・ド・メディチスについてムチャクチャに批評しているところですかね。ここは、何度読んでも面白い。

そして、感心したのは、第3章でルイ十四世のファッションについて、
鬘と髭は相性が悪いらしく。鬘の時代に顎髭は無く(口髭はままある)、顎髭の時代に鬘は無い。
  そういわれてみればそうです。ただ、更に前の15世紀ぐらいはどっちも無かったんですが、それはどうなるのかな。


posted by 山科玲児 at 07:21| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月11日

台北101新年花火


台北101新年花火の動画を観ましたが、  いやあ、すごいなあ。
よく火事にならないなあ。

デジタル  イメージと花火がよく調和しているとおもいました。
台湾のセンスは、一味違います。

台北101新年花火の動画
https://www.youtube.com/watch?v=E-3S4hlaTgQ

派手に雪が降った長崎は寒くて困っております。
さすがに台湾は、台北でも11度−九度という温度です。台湾で新年というのも良いなあ。。

posted by 山科玲児 at 19:13| Comment(0) | 2018年日記

はじめてのルーブル

はじめてのルーブル.jpg

  ボスについて、間違ったことが書いてあるらしいので、原典で確認しないと、と思って
中野京子  はじめてのルーブル   集英社、2013
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/satsuki_01.html
を借りてきました。今は文庫になっているようです。

 そしたら、面白い本だったので、つい読みふけってしまいました。ミイラ取りがミイラになったということでしょう。確かに、文章が上手い人ですね。うまく読ませてしまいます。

  ただ、やはり、間違いや古くさいところも多いので、この本に書いてあることを真に受けて吹聴することは、やめたほうが良いでしょう。
   著者は、どうもモノグラフ的な研究書を熟読したことがないのではないか?という感じがします。
   まず、疑うことが大事です、ラファエロのことなんかもつっこみどころ満載です。

で、そのボスの「愚者の船」で間違っているところは、、

>各国の美術館にボス作品は散在し、希少価値の高いボス作品をどこも手放すつもりはないという状況下。もはやルーブルがボスを入手する見込みはなさそうに思えた、そんな時―すでに20世紀も20年近く過ぎていた―個人から寄贈されたのが、この『愚者の船』だった。、

「愚者の船」の連れとされる「放浪者」がボイマンス美術館の後援ファンドによって買われたのが1931年、もう一つの連れのワシントンの「守銭奴の死」がナショナルギャラリーに入る前の所有者サミュエル・クレスによって買われたのが1951年 いずれも、愚者の船がルーブルに入った1918年より、ずっとあとです。
 つまり、「もはやルーブルがボスを入手する見込みはなさそうに思えた」というのは、間違いです。
 また、「愚者の船」(ルーブル)「放浪者」(ボイマンス)「守銭奴の死」(ワシントンNG)エール大学の断片
の関係については、木目の一致から、現在は再構成されておりまして、中野さんの記述はおかしいのですが、まあそれはそれでこういう細かいことはしょうがないのではないかと思います。

  むしろ、1918年の寄贈の時点の状況を全く誤っているところが、大きな欠点ですね。

posted by 山科玲児 at 08:39| Comment(0) | 2018年日記

2018年01月10日

アメリカの宗教画


  キリスト教宗教画の選抜をしていて、思ったこと。


   アメリカが優れた宗教画を未だ生み出していないようにみえるのは、WASPが主人公であって、Pのプロテスタントは教会で宗教画をあまり使わない、さらにユダヤ人も教会では絵画を使わないということと関係があるのかな?という問題提起です。


  アメリカが静物画や風景画ではそれなりに独自な作品を出しているのとは違う事情なのかな。と思いました。


   ただ、そうなると、なんでカトリックばかりの中南米から優れた宗教画が出ないのだ、、という異論がでますね。

 植民地では本国の文化輸入でことたれりで、現地で養成することが少なかったのでしょうか。

   伝統の差ということもありますが、未発掘ということもあるかもしれません。音楽の世界では18世紀に中南米で活躍したチポーリの作品が最近は有名になっておりますしね。


posted by 山科玲児 at 08:57| Comment(0) | 2018年日記